この記事での学習内容 基本情報 応用情報
送受信者の間でデータを確実に伝送するための制御機能である伝送制御の仕組み,特徴を理解する。
用語例:データリンク制御,ルーティング制御,フロー制御,ベーシック手順,コンテンション方式,ポーリング/セレクティング方式,HDLC,マルチリンク手順,相手固定,交換方式,コネクション方式,コネクションレス方式,パリティチェック,CRC,ハミング符号,ビット誤り率,SYN 同期,フラグ同期,フレーム同期
伝送制御
伝送制御とは、データを確実に伝送するためのルールです。送受信者の間でデータを確実に伝送するための制御機能で、回線の接続から通信が終了し回線を切断するまでを対象とします。
データリンク制御
相手とのデータを伝送する通信路の確立を行います。この通信路の確立を行うための手順をデータリンク制御と呼んでいます。(データリンク=論理的な伝送路)
ルーティング制御
通信相手との経路が複数ある場合、どの経路を通るか決めることをルーティング制御と呼んでいます。
フロー制御
データ通信において、データを高速に大量に受信相手に送ると、データの取りこぼしが発生する場合があります。これは、受信側が大量のデータを受け取れないことや、途中の経路でデータを転送する機器が受け取れない場合などがあります。この取りこぼしを防ぐようにする制御をフロー制御と呼んでいます。
通信誤りの検出方式
- パリティチェック
- 通信誤り検出用のビットを付加する方式。1ビットの誤りならば検出できる。
- CRC
- Cyclic Redundancy Check(巡回冗長検査)の略。多項式による計算で求めたビット列を付加する方式。複数ビットの誤りを検出できる。
データリンクの確立方式
データリンクの確立方式とは、送信権の決定方式のことであり、データリンクの確立形態は1対1の接続方式(=ポイント・ツー・ポイント)と、分岐回線方式(マルチ・ドロップ)があり、それぞれ、送信権の決定には、別の方式が採用されています。
コンテンション方式
ポイント・ツー・ポイント方式で採用されていて、送信側が送信要求を出して相手側が送信権を得てデータ転送を行う方式。
ポーリング・セレクティング方式
マルチドロップ方式で採用されていて、全体の制御を行う1次局が、接続されている端末(2次局・従属局)に対して、順番に送信要求を確認していき、2次局が送信データを持っていれば、1次は2次局から送信データを受け取ります。この手続のことをポーリングといい、2次局側が送信を行う場合に行われます。
1次局から2次局にデータを送信する場合に行われるのが、セレクティングという手順で、1次局から送信対象の2次局に受信準備を依頼し、2次局が受信準備を完了したことが通知されると、1次局は2次局に対してデータを送信する。
同期方式
データの送信と受信において、タイミングを合わせるための方式。信号同期ともいい、データの開始位置と終了位置を判別することで正しく送受信するための方式。
調歩同期方式
一文字のデータを伝送するために、開始位置を示すためのスタートビットと、終了位置をしめすためのストップブットを付加する方式です。通信量の20%が同期のためのビットとして使われることになり、効率は良くない方式です。低速な文字データの伝送の場合に使用されます。
キャラクタ同期(SYN同期)方式
通信したい文字列の前後に同期用の文字符号を付加して、同期を行う方式です。この動機方式が用いられるベーシック手順という伝送制御手順の場合、同期用の文字符号をSYN符号と呼ぶため、SYN同期方式とも呼ばれます。文字列の伝送にしか使えず、低速~中速の伝送に使用されます。
*SYN符号以外には、テキスト開始のSTX符号、テキスト終了のETX符号などの基本型伝送制御符号というものが定義されている。
フラグ同期方式
文字列ではない、汎用的なビットパターンを通信する場合に用いられる方式です。フラグシーケンスと呼ばれる、特殊なビットパターンをデータの前後に付加することで、同期を行います。
基本的に、高速な常時接続の回線で用いられることが多く、その場合は通信するデータがない場合は、常時フラグシーケンスが伝送されていることになります。(フラグシーケンスではないビットパターンが来た、というのを同期のタイミングとして使う方式)
主な伝送制御手順
無手順
同期方式には、調歩同期方式を用い、誤り制御は備えていない手順。
ベーシック手順(基本データ伝送制御手順)
テキストデータを確実に伝送するための伝送手順で、同期方式にはキャラクタ同期方式を、誤り制御にはパリティチェック方式を用いる伝送手順です。
HDLC(High-Level Deta Link Control)手順
任意のビットパターンを高速に伝送するための伝送手順で、マルチリンク制御など、複数のデータリンクをまとめて扱えるのも特徴。同期方式にはフラグ同期方式を、誤り制御にはCRC方式を用いる伝送手順です。
パリティチェック方式
パリティチェック方式とは、通信誤り検出用のビットを付加する方式です。
送信するデータを8ビットで区切り、データの中にある1の数をカウントして偶数個なら0(又は1)、奇数個なら1(又は0)をデータの区切りの最後に付加します。この付加した1ビットをパリティビットといいます。
パリティビットの付け方には2種類あり、偶数パリティチェック方式では、パリティビットを含んだデータの1の個数が偶数個になるようにします。奇数パリティチェック方式の場合は、1の個数が奇数になるようにします。
受信側は、転送データが正しいかどうかのチェックに、送られてきたデータの区切り毎にデータ内の1の個数をカウントしてパリティを算出し、付加されているパリティビットと比較して同じかどうかをチェックします。
転送中にデータが誤った場合、付加されたパリティビットと受信側で計算したパリティが違うので、データの誤りを見つけることができます。
1ビットの誤りは検出できますが、複数ビットの誤りは検出することが出来ません。また訂正することも出来ません。
パラレル転送方式の場合に、縦方向(垂直方向)と横方向(水平方向)の両方でパリティを付加することが出来ます。(下図は偶数パリティの場合)
この垂直パリティと水平パリティを使うと、1ビットの誤り検出と訂正ができ、複数ビットの誤りも検出できます。
コネクション方式
通信相手ときちんと手続きを踏んで、通信路の確立を行ってから通信する方式です。
確実にデータをもれなく抜けなく送りたい場合に使用します。
コネクションレス方式
相手との通信路の確立を行わないで、送信側側が勝手にデータを送りつける方式です。データが多少ロスしようと、高速に伝送したい場合に利用されます。
マルチリンク手順
マルチリンク手順とは、複数の回線を束ねて相手と高速に通信をする技術です。例えば、ISDNの2本の64kbpsのデータ用チャネル(Bチャネル)を束ねて128kbpsで通信できます。
伝送制御手順 | 同期方式 | 誤り制御 | 通信速度 | 通信路の確立 |
---|---|---|---|---|
無手順 | 調歩同期方式 | なし | 低速 | コネクションレス方式 |
ベーシック手順 | キャラクタ同期方式 | パリティチェック | 低~中速 | コネクション方式 |
HDLC手順 | フラグ同期方式 | CRC | 高速 | コネクション方式 |